喫茶店での不思議な出会いと路上ライブの打ち合わせ

web小説 ≪不食人類♯4≫

 

「いらっしゃいませー」

滝沢と五条が高円寺駅北口の喫茶店に入ると

涼しげな白いブラウスの制服に身を包んだ

女性スタッフが笑顔で彼らに声をかけてきた

「2名さまですか?」

そう聞かれて、滝沢も笑顔でうなずくと

店員は奥のテーブルの方向に手をかざした

2人を丁寧にそこまで案内してくれるようだ

 

滝沢たちが店員のあとに続いて歩き出すと

グレーのスーツを着た長身の男とすれ違った

いかにもIT系の実業家、といった雰囲気だ

通路ですれ違う時に一瞬、目が合ったのだが

その瞬間、彼がフッと笑ったような気がした

滝沢が男の背中を目で追うと、後ろの五条が

「知り合いですか?」と不思議そうに尋ねる

 

「いや・・・」胸の中に引っかかるものを

感じながらも、それが何かは分からなかった

もしかしたら自分を知ってる人かもしれない

今まで色々な場所でライブをしてきたので

滝沢のことを一方的に知る人も沢山いるのだ

有名人、という程では全くないのだが・・・

 

喫茶店での路上ライブの打ち合わせ

入口から一直線に進んだ位置にある奥の

テーブル席に向い合わせで2人は着席した

店員にアイスティーとレモンティーを注文し

さっそく五条が資料をテーブルの上に広げる

「あまり時間は無いので、ざっと確認で」

こんな展開になると滝沢は完全に聞き役だ

彼女に意見したら倍返しの覚悟が必要となる

 

五条が路上ライブの流れを説明しているのを

聞きながら、店内をそれとなく眺めてみる

まだ午前中なので、お客さんの数はまばらだ

ふと窓際の席を見てみると、さっきの男が

主婦らしき3人組と楽しそうに談笑している

どんな関係なのか見ただけでは分からないが

彼は営業マンの可能性もあるな、と想像した

 

「ちょっと、聞いてるんですか?」

滝沢の注意が他に向かっているのを敏感に

察知した五条は、テーブル中央に詰め寄った

「あ、ああ・・・もちろん聞いてるよ

最初の方はいつも通りで、お客さんの数が

増えてきたら色々と告知するんでしょ?」

答えると同時に店員がドリンクを運んできた

 

彼女の注文はいつもレモンティー

「お待たせしましたー」

少し間のびした声の先ほどの女性スタッフが

ドリンクを2人の席に丁寧にゆっくり置いた

とりあえず、五条の矛先は収まったようだ

滝沢はその店員に心の中で、ナイスと言った

五条はとりあえず注文したレモンティーに

ストローを入れて、不愛想にすすっている

 

なぜか彼女はいつもレモンティーを注文する

喫茶店でも、ファミレスでも、その理由を

聞いたことはないのだが、不思議だった

とはいえ、滝沢もいつもアイスティーか

アイスコーヒーを頼むので大差は無いのだが

いつか聞いてみようとは思っていたけれど

そのタイミングが今では無いことは確かだ

 

気が付くと、窓際の席にいた男と主婦3人は

いつの間にか、そこにいなくなっていた

テーブルには空のドリンクのグラスが4つと

生クリームのついた小皿が3つ残されている

とりあえず滝沢はアイスティーを飲み干すと

資料についての質問をいくつか彼女にして

半年ぶりの路上ライブの準備を進めていった

 

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