
すでにモニターにはアゲちゃんが表示されている。
『 つまり…これでタイムトラベル機能がついた
ってこと? この端末でそんなこと出来るの? 』
シンディはまだ信じられないといった表情だ。
無理もない。タイムトラベル機能をつけるには
億単位の金額が必要だし、特殊な技術が必要だ。
整備士の僕ですら、こんな機械は見たことがない。
『 ハデス製品は宇宙イチィィ!出発しますか? 』
DJドクロのアゲちゃんがレコードを指で回すと
モニターに色々な時代の写真が表示されていく。
紀元前、江戸時代、古代ローマ、フランス…
『 シンディどうする?ミッションクリアするには
江戸時代に行って、北斎に会う必要があるよ 』
熱心にモニターを見ているシンディに僕は言った。
『 ホクサイって誰?』 彼女は怪訝な顔で僕に聞く。
『 あ〜…画家だな、日本で有名な昔の絵描き 』
シンディはなるほど、といった表情でうなずく。
さっきまでの暗かった顔が少し明るくなってきた。
『 つまり、その画家に私の絵を描いてもらえば
いいってことね?それって超、簡単じゃない?』
いや、超がつくほど簡単ではないと思うが・・・
『 先輩!簡単です!行きましょう、江戸時代!』
ディランがハイテンションでシンディを煽る。
自分のせいで彼女が死ぬのは避けたいのだろう。
『 アゲちゃん、出発よ!今すぐ行きなさい!』
シンディは開き直ったかのように元気になった。
『 アイアイサー。では今から時空を超えマース 』
宇宙船の外を見ると、景色が歪んで動き出した。