
スマホから投影されたピカソの作品が壁に映ると
部屋の空気がピン、と張り詰める。この時代だと
ピカソのゲルニカは理解されないかもしれないな。
『 これは…戦か 』 北斎はアゴに手をあて静かに呟く。
『 だな、変わった描き方だけんど、すごい絵だ 』
お栄さんも筆を止めピカソの絵をしげしげと眺めた。
わかるのか、さすがだな。天才親子の感性に脱帽だ。
『 次、ダヴィンチのモナリザ 』 シンディが言うと
ピカソのゲルニカがモナリザの優しい絵に変わった。
『 むぅ… 』 『 はぇ〜 』 天才親子は絵に見入っている。
さっきまでの殺伐とした空気が急に柔らかくなった。
まるで部屋がモナリザの微笑に包まれているようだ。
絵の影響力はすごいな、ここまで空気が変わるのか。
そこで北斎は筆を置く 『 おい、しんでぃだったか 』
彼は初めて彼女を名前で呼んだ 『 もういい、充分だ』
北斎がそう言うとお栄さんは目を丸くして驚いた。
『 おとっつぁん!?何いってんのさ?もったいない 』
うしろで見ていた北渓さんも割り込んで喋りだした。
『 先生!そうですよ!彼らの忍術はすごいですよ!』
北斎は2人を交互に見て 『 はぁ〜 』とため息をつく。
『 バカヤロウ、忍術なもんか。コイツらは本物だ 』
そして僕らの方を向いて続けた。『 要はあれだろ?』
『 俺らが信長様の時代に浮世絵を描くようなもんだ 』
お栄さんと北渓さんは、うんうんと頷いて話を聞く。
『 そんなものはまだ無ぇ。そりゃ皆が驚くだろうよ。
そしてコイツらの時代はこういうモンがあるんだ 』
北斎は再びお栄さんの方を見た 『 それになお前ら 』
『 俺達は与えられる側じゃねぇ、与える側の人間だ 』