
これは・・・やばい。僕は反射的に身をかがめて
雑草の生い茂る地面にひれ伏した。大ピンチだ。
幸い周りに丈の高い草があるから隠れていられるが
このままでは見つかってしまうのも時間の問題だ。
200m程先から「あっちだ!」「いや、こっちだ!」
という人の騒ぎ声が、馬の鳴き声に混ざって響く。
見つかれば間違いなく無礼打ち…斬られるだろうな。
額からいやな汗がたれ、地面に落ちて吸い込まれた。
ふと顔を上げて前方を見ると、転んだディランが
ゆっくりと立ち上がろうとしている姿が見えた。
立つな!僕は高速ほふく前進で彼女の方に接近した。
ガサッ、ガサッ、草が顔に当たりチクチクと痛い。
草の隙間から白い着物が現れて、それをグッと掴む。
思い切り下に引っ張って彼女を地面に押し付けた。
『 え!?・・もがっ!』 驚き、声をあげようとする
彼女の口を僕はとっさに手でふさいだ。『 静かに 』
僕とディランは並んで地面にうつ伏せの姿勢になり
前方の大名行列の混乱を雑草の隙間からそっと覗く。
『 見つかれば斬られる、とにかくここを離れよう 』
僕は小声で彼女に耳打ちし、逃げる方向を指差した。
『 ・・何で斬られるんですか?何もしてないのに 』
『 ・・・ 』 説明が難しい。そしてその時間も無い。
『 後で説明する。今はとにかくここから逃げるぞ!』
彼女は怪訝な表情だが、危険は理解できたらしい。
僕と目を合わせると緊張した顔つきで静かに頷いた。
『 あ・・・』 よし逃げようと思った時、その方向に
すでに何人かの人がいて、必死に犯人を捜していた。
マズい・・僕らは囲まれ、すでに逃げ場は無かった。