忍術という言葉で全ての疑問をクリアに解決

江戸時代の町人が忍者と叫んで興奮している場面。後ろでパンク風の青年がポーズをとっている。

『 次!モネの睡蓮!』 『 うおぉ〜!』 『 すっげー!』

シンディが作品を次々と壁一面に映し出していく。

それに呼応し北斎とお栄さんが彼女の肖像画を描く。

『 顔まで描いたぞ 』 北斎はすでに興奮状態だった。

『 オッケー!次、ミケランジェロのダビデ像出力!』

『 了解!』 彼女の命令でディランは3Dプリンターを

操作して、レーザーによるリアルな彫刻を出力した。

 

直径30cm程のダビデ像が彼らの机の前に置かれる。

『 むぅ〜…』 北斎は一旦筆を止め、それを凝視した。

そしてインスピレーションを受け再び絵を描き出す。

その繰り返しだ。すごい、部屋が熱気に包まれてく。

『 なぁ、あれって 』 北渓さんが僕に話しかけてきた。

『 何です?』 『 どういう仕組みなんだ?奇術か?』

ようやくテクノロジーについて疑問を持ったようだ。

 

説明が難しいな。『 未来ではあれが普通なんです 』

『 あれがか?中に人が入ってるわけじゃないよな?』

『 う〜ん…人の代わりに機械が動いているんですよ 』

僕が説明するたびに、北渓さんは混乱していった。

『 機械?それは人なのか?わけが分かんねぇぞ… 』

ついに頭を抱えて悩みだす。なかなか面倒くさいな。

僕は北渓さんの肩をポンと叩く 『 あれは忍術です 』

 

それを聞くと彼の顔がパァと明るくなっていった。

『 あぁ、忍術か!それなら納得だ!なるほどな〜 』 

そして立ち上がり、今度は彼が僕の肩をポンと叩く。

『 お前たち、忍者だったんだな。オランダの忍術か 』

彼は目を輝かせて言った。忍術なら納得するんだな。

『 そうです、忍術。ニンニン 』 なんて便利な言葉だ。

『 次!ピカソのゲルニカ!』 シンディの声が響いた。

 

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