
黒い色をした縦横20cm、厚さ5mの正方形の物体。
一見、ただのプラスチック板にしか見えないだろう。
僕は右手の指でそれを持ってディランの方に掲げた。
『 何ですか?コレ?データ保存用のカード?』
そう言われると確かにそんな風にも見えるが、違う。
『 これは折りたたみ式なんだ 』 僕は正方形の物体を
上下左右に広げ、全長30cmの完成形を組み立てた。
『 ああ、ドローンか!』 『 そう、これが秘密兵器だ 』
僕が地球に来てから40年以上経つが、最初の頃は
コレを使って地上のデータをよく分析していた。
地球にはかなり珍しい地層や動植物が存在している。
他の惑星と比べても、その多様性はトップクラスだ。
だからデータを欲しがる科学者に売ったりしていた。
連続駆動50時間で、反重力式の飛行タイプだから
飛行中に音が全くしない。高性能のドローンだ。
『 飛ぶ以外にも色々できるんだ 』 僕とディランは
柳の木の下に腰かけた。ここなら目立たないだろう。
柳の葉が僕らを覆うように垂れて、風に揺れている。
僕はスマホのアプリを起動し、ドローンを飛ばした。
水面すれすれを走らせ、僕らの前で停止させてから
1mほど上昇、空中に3Dホログラムを投影させた。
とりあえず目立たないよう、鳥が飛んでいる映像だ。
『 すごーい、もっと大きな映像も出せるんですか?』
ディランは興味津々といった様子で質問をしてくる。
『 MAXで半径5mまでいける。怪獣も出せるよ 』
僕は調子に乗り、映像設定を球体の半径1mにした。
こうするとドローンがその映像に変化して飛行する。
『 ゴジラ!』 ディランは喜んだ。怪獣が好きなのだ。
『 お前たち!』 そして突然、僕の背後から声がした。