
僕は三度笠を目深に被り目を合わせないようにした。
ここをやり過ごせれば、あとは宇宙船に戻るだけだ。
こちらを見ている侍との距離が後方50m程になる。
そろそろ速度を上げるか?もう少し様子を見るか?
追ってくる気配は無い。服装がかなり変わったので
おそらく気付かれてはいないはずだ。距離は100m。
その辺りから徐々にスピードを上げてピンチ脱出!
よし、クリア!僕が馬上でガッツポーズをしてると
ちょうどドローンが追跡を終えて空から戻ってきた。
僕はそれをキャッチし折り畳んでポケットに入れる。
ドローン大活躍だったな、持ってきといて良かった。
地球でも最近、色々な場面でこいつが活躍してるが
惑星によっては数百年も前から使われている機械だ。
UFOの目撃は大抵、調査用ドローンだったりする。
太陽の位置が広がる風景の山頂付近まで傾いてきた。
山々がうっすらとしたオレンジ色に照らされている。
15〜16時といったところか。美しい景色を眺めて
田んぼのあぜ道を走っていく。目的地はもうすぐだ。
宇宙船はカムフラージュ機能で見えなくなっている。
確かあの1本松の付近に停めてあったはずだけど…。
僕はそのあたりまで行くと馬を止めて馬上を降りた。
手探りで宇宙船の入口を探す。…あった、これだ。
『 OKだディラン、お疲れ様 』 僕がそう声をかけると
馬の姿が白髪ポニーテールの和風女性に戻っていく。
『 の、喉が渇きました… 』 彼女はかなり疲れていた。
『 有難う、助かったよ。とりあえずメシを食おう 』
僕は入口中央に手の平を当てる。扉が静かに開いた。