
『 悪魔だって泣く時は泣くし、感情はあるから 』
そう言ってシンディは再び作戦室に入っていった。
何だろう?寿命の件で思いつめて泣いていたのか?
割とナイーブなんだな、と意外に思ったが違った。
僕も部屋に入ると、モニターには映画が流れていた。
「 風と共に去りぬ 」 ああ、これ観て泣いてたのか。
しかし、何回目だ?シンディがこの映画を観るのは。
スカーレット・オハラ主演、南北戦争のアメリカで
たくましく生き抜く女性の姿を描いた名作だけど
僕が知ってるだけでもシンディはこれを5回観てる。
しかも、毎回、映画を見るたびに号泣しているのだ。
僕も付き合いで1、2回観たけど、4時間の長編だ。
『 チーン!』 とシンディが鼻をかむ音が部屋に響く。
彼女はソファに体育座りして、ポテチを食べていた。
『 先パイ、ホントこの映画好きですよねー 』
ディランはグラスに注いだ水を飲みながら言った。
『 俺が知ってるだけで5回 』 『 私は7回目ですよ 』
『 ・・・ 』 僕とディランは無言で目を見合わせた。
どんだけスカーレット・オハラに共感してるんだ?
『 チーン!』 再びシンディが鼻をかむ音が聞こえた。
『 ・・・まあいいや、メシ食お 』 『 そうですね 』
僕らはカップラーメンにお湯を入れ、冷蔵庫から
干し肉や果物などを持ってきてテーブルに並べた。
『 ズズッ、ズズッ 』 と僕らが麺をすする音が響く。
『 チーン!』 ああ、映画はクライマックスあたりか。
『 アゲちゃん 』 僕は専用モニター向かい話しかけた。
『 ハーイ 』 DJ姿のスケルトンが画面に表示される。
『 あと何時間? 』 『 残りが約39時間になりますね 』