
ドローンと家斉の距離は約3m。これ以上近づくと
刀で叩き落とされる可能性があるのでここまでだ。
家斉の両脇には2人の侍が刀を構えて警戒している。
こちらが空中に浮いているので、手は出せないが。
家斉は扇子を閉じるとしばらく黙ってこちらを見た。
恰幅のよい、まさに江戸の殿様といった風情がある。
『 いかにも、わしが家斉である。そちは何者か?』
よし、本人からの言質も取った。これで確定だ。
写真も映像も充分に撮ったし、もう用は無いけど…。
貴重な機会だし、せっかくだからもう少し話すか。
『 私は神の使いです、将軍へ挨拶にお伺いしました 』
僕が適当に答えると、家斉は目を丸くして驚いた。
『 何と、神の使いとは!東照大権現様のお導きか!』
東照大権現って確か徳川家康のことだったよな…。
『 東照大権現様より神託を預かっております 』
家斉が窓に1歩近づくと、警護の侍がその前に出る。
『 よい 』 家斉は2人の侍を手で制して窓際まで来た。
う〜ん…どうしよう。超、期待させちゃってるな。
家斉は目を輝かせて、家康からの伝言を待っている。
ここであまり真面目なことを言っても仕方ないし…。
『 家斉よ… 』 『 はっ!』 家斉は感無量といった顔だ。
『 がんばってチョンマゲ 』
言った瞬間、背後の侍が『 はぁ?』 という顔になる。
しかし家斉は目を潤ませ背筋を伸ばし姿勢を正した。
『 東照大権現様!有難きお言葉!この家斉、この
チョンマゲに誓って、徳川の天下をお守りします!』
おお、家康効果すげえ。チョンマゲでいいんだ(笑)
そこへディランの大声が響いた『 誰か来ました!』